なぜ、欧米の標識はかくも美しい(ふうに思ってしまう)のか
2015/12/15
欧州やアメリカに行くと、様々なものに異国の雰囲気を感じるものです。
言語・食文化などはもちろんですが、仕事柄どうしても商品のパッケージや道路標識・看板の文字やデザインに目が行ってしまいます。
通りの名前や、日本だと「右側道路右折のみ」的な標識なんですが、日本語よりも断然こっちのほうがかっこいい、ような気がしてしまします。
一番右の「自転車専用通路」なんて、見て下さい。
もうこれそのままTシャツにしてしまいたいくらいです。ちなみに日本だとこんな感じ。
うん、やっぱり「かっこいい」とか「かっこわるい」とかそういう対象にすらならない笑。
というのは、逆に道路標識としてちゃんと機能しているということなんだと思うのです。先ほどのかっちょいいBAKE LANEとかその他の標識は、英語に馴染みのない私のような日本人からすると「Tシャツにしたい」くらいかっちょいい、崇拝の対象なんですが、逆に私にとって「道路標識」という機能は果たしていないともいえます(こういうやつが、間違っても海外で運転してはいけない)。
そう、海外のパッケージや道路標識に憧れるのは、「異文化の文字・デザイン」だから、というのがシンプルな理由なのです。
ただ、アルファベットと漢字・かなという、文字について少し考えてみると、それだけが理由ではないとも思えてきます。
たとえば、文字の数。
アルファベットはA〜Zで26文字。
対して、我々が使用する日本語で使用する「漢字」は2136字(2010年改訂常用漢字表より)、「ひらがな・カタカナ」はそれぞれ48字。
「文字数」で比較すると圧倒的に日本語の方が複雑なのが分かるはずです。
単純に見栄えだけのレベルで考えると、バリエーションが「より少ない」文字のほうがデザインが洗練して見せやすいというのはあると思います。しかも、日本語の場合は「漢字」のほかに「ひらがな(カタカナ)」が組み合わさってきているので、更に複雑。
ひらがなって、漢字の省略字とはいえ、ビジュアル的には全くの別物ですからね。同じ漢字圏の中国のほうが、ひらがながない分見栄えが整えやすいような気がしてしまう。
でも、べつに日本語の文字組みが他の言語に比べて「汚い」と言っているのではありません。例えば、江戸時代に芽生えた「寄席文字」。
隙間が入らないように、ぎっしりと一文字一文字埋め尽くすように書かれた文字。漢字、ひらがな、カタカナが見事に融合しています。
標識も、例えば旧国鉄の頃のものを見ると、漢字もひらがなも美しく組まれているなぁと関心してしまいます。
使える文字のバリエーションが多い分、ごちゃごちゃとなりやすいんですが、その分日本語のタイポグラフィーの方が奥が深いと考えることもできます。
・・・まあ、でも街の写真とか比べるとどうしても欧米の町並みの方が美しいと思ってしまう自分もいる笑。
文字のデザインうんぬんよりも、やっぱり「あこがれ」とかそういう気持ちがフィルターをかけているっていうのもあるんでしょうね。
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